お久しぶりです。前回の投稿から時間がたってしまいました。わたしは今、香港にいます。ちゃんと書こうと思っているとなかなか書けないので、ばーっと書きます。長くなります。そしておそらく文体が荒れます。が、お付き合いいただけるとうれしいです。
香港への引っ越し
2週間ほど前に越してきました。アパート探しが難航しましたが、なんとか新居に落ち着きました。インターネットもやっとつながり、少しほっとしています。香港へ飛ぶ日、大好きなファッションブランドから翻訳の依頼が入り、飛行機の中では仕事をしました。子供たちとの飛行機はそれだけでかなりストレスなので、心配だったけれど、ふたりとも大きくなったなあ。ちゃんと自分で座って、映画を観ていました。スーパーマリオです。それから7歳児はアングリーバード。4歳児はパズルをしていました。
エドモントンから香港に直行便はないので、バンクーバーで乗り換えて香港まで。家のドアを出てから香港の地をふむまで、24時間かかりました。大人はへとへとでしたが、子供たちはとても元気。「飛行機たのしかった!!」と飛び跳ねていました。イミグレーションも問題なく、空港の外へ。むっとした湿気と、海のにおい。ノバスコシアの冷たい海のにおいじゃない。なんだろう。子供のころに訪れた九州の海のにおいに似ている気がする。
ホテルへのシャトルのバスを案内の人に尋ね、バス乗り場まで歩いたのですが、スーツケース8個と子供ふたりを連れていくにはけっこう遠かったし、教えてもらったバス乗り場の番号には明らかにちがうバスが止まっていて、運転手さんに英語で尋ねたら広東語がかえってきて、久しぶりに使用言語を共有しない経験をしました。なんとかバス乗り場を見つけ、乗り込んだら席に座らないまますごい勢いでバスが出発。ここでも大人はびびっていましたが、子供たちは大喜び。「ハイパードライブー!いえーい!!」みたいな感じで、わたしの頭はふらふらしました。
ホテルに着いたときは現地時間午後7時。わたしたちの体内時計は朝。ルームサービスに香港式朝食なるものを注文。飲茶とやきそばみたいなものと、お粥が来ました。お粥にピーナッツと揚げ物を入れて食べるのね。おいしかった!エドモントンはほんとにご飯がおいしくなかった(わたし基準)ので、香港はご飯に期待できる!と少し元気になりました。翌朝のモーニングもルームサービスを予約してから就寝。なかなな寝付けず、やっと眠れたと思ったら、電話の呼び鈴にたたき起こされる。なぜかキッチンからで「明日のモーニング、8時半でオッケー?」と尋ねられ、オッケーだと答えて受話器を置き、時計を見ると午前12時半。この時間に客室に電話かけるのか……? 翌朝、時差ボケのためみんなめちゃめちゃ早く起きて、結局モーニングは朝7時に運んできてもらいました。
その日のうちに、友人の家に移ります。東京でできた友人で、香港に暮らしていますが夏休み中は2週間ほど家を空けるため滞在していいよと言ってくれたんです。ありがたや!! 海の見えるアパートで、わたしは海をながめるのが大好きだったので、当初の町のど真ん中に住む計画を変更し、海の見えるアパートを探すことにしました。現地のエージェントにお願いしたのですが、四六時中Whatsupの通知が鳴り、あまりの積極性にちょっと怖かった。午前中3件見に行く予定が、午後まで使って10件になったり。そして移動は車ではなく地下鉄。エージェントが速足すぎて子供たちの手を引いては追いつけない。スリリングなアパート探しでしたが、子供たちがすごく無理をしていたのが分かったので、このエージェントさんとはお別れしました。けっきょく2週間ぎりぎり粘って、海の近くのアパートを見つけ、引っ越し。
海の近くであることと同じくらい大事だったのが、家具付きだということ(ほかにも水回りがきれいなことと、キッチンのコンロが三口以上などいろいろあった)。引っ越すたびに家具を購入し、処分するというのはすごく無駄が多いので。決めたところはつくりつけの本棚がたくさんあるアパートです。本棚の背が高いから、梯子付き。図書館みたいなリビングで気に入っています。ただ、とても狭いので子供たちが家にいるときはとにかくプールや公園、図書館、モール、市場など動き回っています。
香港で食べる
香港でわたしが楽しみにしているのは、食べることです。見たこともない食べ物がたくさん。香港は飲茶やスイーツでも有名だし、ヘビやハト料理もあるんですね。あんまりヘビやハトは食べたくないけど、いろいろ挑戦したい。現時点で発見したのは、おいしくて安い食べ物を得るためには広東語をマスターするべきだということです。英語が使えるお店は便利だけど、観光客向けなのか料金設定が高め。ウェットマーケットのなかにあるすべて広東語表示のお店には、種類も価格帯も異なる食べ物が並んでいます。
「香港ではあまり家で料理して食べる習慣がない。外食の方が安いから」と聞いていたけれど、英語が使えるお店の価格を見ていたら、とてもじゃないけど毎日は食べられないくらい高かった。飲茶でもひとしな130香港ドルくらい。みんなどこで食べ物を買っているんだろうとさまよっていたら、ウェットマーケットに迷い込み、安くておいしい食べ物屋さんにたくさん出合いました。全然英語はつかえない。メニューを見てもなんだかよく分かんない。だけど、おいしそうだし、安いし!!! 思い切って手振り身振りで注文。ゲットした名前も分からない食べ物がおいしすぎて、覚えたての広東語「好好味(ホウ ホウ メイ)」と伝えると、売店のおばちゃんが正しい発音を教えてくれ、通いたいお店が増えていく。泳ぎ方を知らなかったのに、イルカと泳ぎたくてメキシコの海に飛び込んだことがあるのですが、あのときの感覚と似ているなと思います。
香港では英語を話せるとそれなりには生活できるのだと思います。だけどすごく寂しい(わたしは)。広東語でめちゃめちゃ話しかけられても、わからない。広東語はけっこうカジュアルに汚い言葉を使うと聞いたのですが、それもわからない。素敵なものを見ても伝えることすらできない。そして言語が分からない環境に身を置いて、情報が得られない怖さを実感しています。言葉や情報が分かって当たり前、自分に向けられていて当たり前。「翻訳」という仕事は本来、そういう状況や環境を批判的に見ることからはじめるべきなのに、そこの配慮や感覚が自分には足りなかったような気がする。「言語」は文字で書かれたものに限定されず、媒体や手段などもっと広げて「分からない」ことが存在することも「分からない」状況や環境のことを考えたい。広東語の基礎を固めるために語学学校に行こうと思っています。
仕事のこと
さて、今冬にオークラ出版マグノリアブックスから訳書が刊行されます。ニナ・ラクール著『イエルバブエナ』です。ラクールはずっとYAを手掛けてきて、レズビアンとして自分が若いころに読みたかった、必要とした物語を描くことを信念に執筆をつづけてきました。プリンツ賞を受賞してから一気に注目されました。なぜ日本語訳が出ないのか不思議でしたが、今回、彼女の作品をはじめて日本語で紹介でき、とてもうれしく思っています。『イエルバブエナ』はYAではありません。ラクール自身の言葉を借りると「はじめての大人の小説」なのだそうです。
「イエルバブエナ」はハーブの名前です。猪突猛進なサラと、優柔不断なエミリーというふたりが「イエルバブエナ」を通して出会います。この作品はレズビアンロマンスで、ふたりの出会いや関係の発展の仕方は翻訳していてとても楽しかった!そしてセルフケアや過去のトラウマや喪失とどう向き合うのかなどのテーマが丁寧に描かれる部分は、自分の心が癒されていくようでした。ハーブの香り、雨に濡れた土のにおい。そういうもので人生が少し特別に思える瞬間を積み上げていくような、水面が平らになるような、そんな物語です。おそらく12月刊行になると思いますので、またお知らせしますね。現在、ぜっさんゲラ中です!
そして、絵本「ちいさなあおいトラックのリトルブルー」シリーズも、秋に第3巻目がでます。「ちいさなあおいトラックのリトルブルー」「リトルブルー、まちへいく」ときて、今度は「リトルブルーときいろのバス」です。はじめての絵本翻訳ですごく難しかったのですが、編集者さんにたくさんアドバイスをいただきながら、3冊目までくることができました。リトルブルーシリーズは北米で大人気ベストセラーなので、北米の友人たちからたくさんのお祝いの言葉が届きました。国内からは、読み聞かせをしている方からの感想が少しずつ届き始め、子供に届けるという絵本翻訳ならではの喜びを感じています。もうひとつ、絵本シリーズの企画を出しているので、そちらもお届けてきたらいいな。
7歳児が起きてきたので、今日はこのへんで。読み直ししているといつまでも何も投稿できなくなりそうなので、このまま送ります!誤字脱字があったらごめんなさい!
それではまた!!