こんにちは、翻訳者の吉田です。1カ月くらいお休みをいただきましたが、無事に小説の訳了、絵本の校了、次の作品の訳入りと達成することができました。
山火事
その間、わたしたちの住むアルバータ州は広範囲にわたり山火事がおこり、うちにも煙の臭いが風に乗って運ばれてきました。例年にない暑く乾燥した日が続いたため、雪解けで出てきた去年の秋の枯れ葉が燃え上がり(原因はおそらくタバコのポイ捨てや焚火の消し忘れなど人為的なものだろうと考えられています)、強風にあおられてまたたくまに広がりました。
(画像元 https://edmontonjournal.com/news/local-news/alberta-wildfire-main)
それに加え、州の保守政府が防災・消防にかかる人員・予算を削減していたため、人手が足りず消火活動が十分に行えない事態に。選挙を控える州政府は、野党からの援助を受けることや州外、国のリソースに頼る判断を下すことを渋り、すべての対応が後手後手に回りました。いまだに89カ所で燃え続けています。
「自助」を打ち出す政府が実権を握り、議論なきまま現場の声を無視して方針を決めて、実行に移してしまう。日本の政治にも共通するところがあるのではないでしょうか。
入管法改悪
あまりにもいくつも例がありすぎてここで全部は書き切れないのですが、最近の日本の政治では入管法の改悪で、難民申請が3回目の途中であっても送還できるという無茶苦茶な法案が通されようとしています。入管の手続きや審査は第三者が確認することができず極めて不透明な状況でおこなわれます。入管施設での収容されている人への虐待の事例は次々と報告されているのにもかかわらず、苦しむ人の声や近くで支援している人たちの声は無視し、命が奪われるかもしれない祖国へ問答無用で送り返すというあまりにも非人道的な措置をしようとしています。
「今、自分が日本に日本人として住んでいる」だけどそれがある日、崩れ去る――その可能性に思いをはせてほしい。あなたが大好きな場所に、大好きな人たちと住めなくなったら?
これって、国を移動することに限らず、国内でも起こっていることですよね。災害で事故で、開発で差別で虐待で親の離婚で、土地を追われたことのある人たくさんいるんじゃないでしょうか。自分が動きたいわけじゃない、だけどどうしても動かなければ生き延びれない。助けを求め逃げてきた人が目の前にいる。そのときに、手を差し伸べないのは同じ(国際)社会に生きている者としての責任を果たしていると言えるのでしょうか?
炎を逃れてきた人がいたら、あなたはどうする?
アルバータ州の山火事で逃れてきた人たちへ、すぐに草の根レベルの支援の輪が広がりました。
山火事で家を捨てて逃げるというのも、土地を追われることです。
難民を祖国に送り返すというのは、燃えさかる炎の中に人間を投げ入れるのと同じことではないでしょうか。煙で目もあけれない、着の身着のままで命からがら逃げてきた人に「お前もう一回あの火のなかに飛び込んで来い、お前死ぬだろうけど知らねえよ」と言ってるのと同じです。
日本は今、いろいろな面で国際社会に存在する意味を問われていると思います。LGBTQに対する差別禁止法もそうです。3年前までトロントに住んでいたころは「日本出身だ」というと、「川﨑宗則選手」って言われたけど、最近は「ああ、日本で女性として生きるのは辛かっただろう」とか「日本は軍事国家になるのか」「最近暗いニュースばかりだけど大丈夫?」とかそういう話ばかりふられます。確実に「日本」への評価は変わっています。
子供たちに残すもの
わたしは青い人間と言われようと、ナイーブだと言われようと、グラスホッパーだと言われようと、やさしい人が好きだし、やさしく生きたいし、やさしい「国」が好きです。子供たちにも「勉強できなくても走れなくてもご飯残してもいいからやさしい人でいてね」っていつも言っています。
今、日本から表立って声が聞こえてくる政治家たちはあまりにも意地悪で、子供たちに説明しながら悔しくてどうしようもないよ。子供たちもぶち切れだよ。日本にいたときはデモに行けたけど、今はカナダからできることをするしかないけれど、まじでくそだ。
この前訳了した小説に、アニシナベの人たちのこんな教え書かれていました。
「七世代先のことまで考えて行動しなさい」
七世代先にどんな人間を、どんな社会を、わたしたちは残すでしょうか。
というわけで、またニュースレターを週1で配信しますので、どうぞよろしくお願いいたします。