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本と映画の翻訳をしている吉田育未です。 翻訳をする日々の中で気づいたことや読んだ本のことなどを書きます。
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Alice Nelson

Ikumi Yoshida
Jul 16, 2023
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いくつかの作品を訳了した先週は、息抜きにアリス・ネルソンの短編「Titee.」を訳しました。

アリス・ダンバー・ネルソン

アリス・ダンバー・ネルソンの肖像

アリス・ネルソンはハーレム・ルネッサンスの作家で、1875年ニューオリンズ生まれ。母親は元奴隷で、父親の出自については諸説あるようです。彼女は現在のディラード大学の前身であるストレート大学に進学しました。女性で、しかも奴隷の子供としては当時かなり珍しいケースだったようです。

大学時代から書き始め、さいしょ彼女の作品は「黒人女性」の作品として受け止められました。しかし、彼女はクレオール、ネイティブアメリカン、アングロサクソン、アフリカ系アメリカ人などのルーツを持つ作家です。詩や短編を出版し、人種主義、圧政、ジェンダー規範による困難や結婚制度について疑問を投げかけました。ダンバーは生涯で三人の男性と結婚しましたが、同時に複数の女性とも親密な関係を結びました。1910年代から彼女は女性参政権運動に熱心に参加し、反リンチ法の成立にも尽力しました。1920年ごろから彼女はジャーナリズムに転向し、人権活動の内容や訴えを記事や、エッセイで発表しました。

生前、彼女の作品は出版されることがほぼなかったそうですが、死後、彼女の作品への評価は高まっています。

なぜ訳しているのか

わたしは作品を理解したいとき、翻訳するようにしています。さっと読んでしまうと、どうしても読み飛ばしや、都合のいい解釈が起こってしまい、ちゃんとテキストに向き合っていない気がするからです。彼女のことを知ったのは、『パッシング』(ネラ・ラーソン著)の参考文献としてあげられていたからです。並行して、ブリット・ベネットの『ひとりの双子』と現代思想の『インターセクショナリティ』を読みました。どちらにも新田啓子さんの文章が掲載されていますが、「インターセクショナリティ」という言葉を考えるときに、ブラックフェミニズムを考えたくなり、あわせてアリス・ネルソンも読みたくなりました。

パッシング原書の書影

ほんとうは今日の投稿で短編「Titee.」の訳文を掲載したかったのですが、自分の中で解釈しきれていない部分があるので、来週公開したいと思います。それか、不完全な訳文を公開して、読んでいる人といっしょに考える、というのもいいのかもしれない。解釈しきれていないというのは、主人公の名前なんです。いくつか呼び名があるんだけど、それが何でかよく分からない。この作家の作品は、著作権は切れているので、原文で自由に読めます。興味のある方はここからどうぞ。

ほんとうはもうちょっと書きたいのですが、香港ゆきの航空券をとって、いよいよ引っ越し準備をしないといけないので、今日はこのへんにしておきます。

日本からは暑さと雨のニュースが交互に入ってくるような気がしますが、どうかみなさんご自愛ください。エドモントンはまた山火事の煙で、外に出られない日々が続いています。エドモントンから書くのもあと3週間くらい。そのあとは香港から、書き続けますのでどうぞよろしくお願いいたします。

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