ゲラに没頭する日々で、書きたいことがまったく書けていなかったのですが、あとがき執筆と次の作品の訳入りと再校ゲラが来る前に告知をします!
『KAGUYA PLANET』 電子書籍配信開始!
だいぶ遅くなってしまいましたが、インタビューをしていただいた『Kaguya Planet Vol.4 プラネタリウム』が電子書籍で読めるようになったそうです!既刊分はぜんぶ電子書籍でいけるらしいので、興味のあるイシューから指をのばしていただけたらうれしいです。
『What We Leave Behind』(私たちがあとに残すもの)
ステファン・クランスキー著
こちらもだいぶ遅くなってしまいましたが、いつかは訳してみたいと思っていたパティ・スミスの文章を訳すことができ、わたしにとってはドリーム・カム・トゥルーでした(パティ・スミスの英文、すっごい独特ですてきなんだよ)。そしてゴダール。わたしはトロントに住んでいたとき、映画もちょこっと撮っていて、そのときいっしょに作品をつくってたイラン人監督のラミンがゴダールの大ファンで、かなり見せられたので懐かしい気持ちで、対談を訳しました。献本は実家に送ってもらっていて、まだ手にできていないので実物を見れていないのですが、ゴダールのアーカイブの写真がたくさん載っているらしく、今度帰省した時に読むのが楽しみ。もし機会があれば手に取ってみてください!
以下紹介文はtwelve books より転載。
フランス人アーティスト、ステファン・クラスニアンスキー(Stéphan Crasneanscki)の作品集。ドイツラジオ文化放送の依頼により、同じくフランス人の映画監督、ジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)のアーカイブを題材に制作した重要作品『What We Leave Behind』を見つめ直し、1冊の本にまとめたものであり、2021年に刊行された同作の日本語版である。また本版は、カバーが折り込みポスターとしても楽しめる仕様となっており、日本語タイトルが入れられている。
箱、コラージュ、静物、メモの4部構成になっている。映画界の巨匠ゴダールのアーカイブを探求するにあたり、作者はゴダールが個人的に収集していた短編映画、オープンリール、歴史的なエフェメラを撮影した。時代を感じさせるメモや参考文献をまとめ上げて散逸を防ぎ、ゴダールの芸術的な思考プロセスを垣間見ることができる断片的な「クリエイティブマップ」を作り上げている。1人の人間の所有物と文化的遺産の両方に向き合う中で、作者はこうしたものに散りばめられたアイデンティティ、トレーサビリティー、時間や空間の広がり、記憶、存在、物質性、史実性といった様々な概念に対する賞賛を表現し、自己の解釈を付け加えている。ミュージシャン、作家、詩人のパティ・スミス(Patti Smith)による序文、映画監督アベル・フェラーラ(Abel Ferrara)との対談、映画評論家、歴史家、編集者であるアントワーヌ・ドゥ・ベック(Antoine de Baecque)によるエッセイを収録。
日本語版翻訳:吉田育未、堀潤之
ISBN: 9789188113771
短編集『お化け屋敷へ、ようこそ』YUKIMI OGAWA著 左右社
英語圏ですでに短編集を刊行し、高い評価を受けている日本語ネイティブ作家ユキミ・オガワさん。日本っぽい世界の怪談話を、英語で書きます。翻訳依頼があったとき、とてもうれしかった。怪談話やファンタジーが好きだからというのと、はじめての短編集の翻訳というのもあったけれど、いちばんは日本語に自分で翻訳できる能力をもった著者の作品を、しかも日本の文化圏の下敷きがあるなかで、英語から日本語に「翻訳」するというタスクが興味深かったから、というのが正直、いちばんの理由だった。
実際に短編を読んでいくと、奇想天外で悲しいのに優しくて、みんなから忘れされたさまざまな「ガラクタ」たちが踊りまわり、愛おしくてたまらなくなった。わたしに翻訳させてくれてありがとう、と思いながら、本当に楽しんで訳した。
そのなかで、いちばん意識したことは、短編すべてを前提として「日本」だと思って訳さないこと。この物語はもともと英語読者に向けて書かれているもので、英語話者で英語圏にずっと身を置いている読者が引き出せないけれど、日本語話者で日本文化圏で育ち英語話者でもあり英語圏で生活してきた自分が引き出せる情報に乖離があると思ったのが理由のひとつ。それから、「日本人著者」が書いているとしても、作中で舞台が「日本」だと特定されていないのであればその世界を「日本的」なものとして訳すことはできない、と考えたから、というのがもうひとつ。なのでなるべく自分の「日本的」とか「日本っぽい」イメージをまっさらにしてやろうと思った。なんか、日本っぽいんだけどこれはどこなんでしょう、みたいな感じを最後まで捨てたくなかった。けど、同時にやっぱり和語というか、そういう雰囲気が英文からにじみ出るときは、思い切りそちらに振った。そういう葛藤や、クリエイティブな部分が今回の翻訳ではとても楽しかったし、オガワさんの文体や表現のパターンが作品によってけっこう変わるので、それに対応する工夫も面白かった。
オガワさんの作品の面白いところは、「日本的」だからといって「ジャパニーズネス」、いわゆるステレオタイプな日本像を使わない、つまり媚びてない、というところだと思う。英語圏では日本文化というか、和風のものにフェチのような憧れを抱く人も多くて、そういうのにアピールするのではなく、ほんとに書きたい世界を書ききっている感じがして、ぐるぐる色が変わる感じとか、ぎゅんぎゅん連れ回されるのが心地よかった。すごい残酷なこと書いているのに、なんでこんなに優しい気持ちになれるのか。こんなに切ないのに、また会いたいと思えるのはなぜなのか。そういう不思議な魅力がオガワさんのストーリーテリングにはつまっていると思います。
そんな魅力の解説を、大滝瓶太さんがしてくださっています。
ユキミ・オガワ作品は「ひととひとならざる者の交流」が基本にある。収録作品には「お化け」はもちろん、「口さけ女」「雪女」「座敷童」など日本でも有名な妖怪が登場し、ときに人間視点、ときに怪異視点でその距離を描いていくのだが、登場人物たちがそれぞれに抱える異質さは「乗り越えるべき障害」としてではなく、「個人の生き方」とされている。設定に設定以上の過剰な意味を持たせることなく、ユキミ・オガワの筆致は「わたしとあなた」の関係性へと伸びていくのだ。
ーー大滝瓶太(本書解説「わたしたちが知っている、わたしたちの知らない世界」より)
また、担当編集者さんたちとの連絡や、懸念事項の共有、訳文の英語との照らし合わせ、スケジュールの調整など、とても気持ちよく仕事に取り組めました。本の翻訳をはじめてから、けっこう辛いなと思うことが多いのですが、こういう風にちゃんと考えてくださっているんだなというのが分かると、すごくうれしいです! 心から感謝しています。ありがとうございました!
内容をちょこっと(左右社ホームページより転載)
結婚相談所に現れた“人間の種”を欲しがる妖怪(「町外れ」)
他人から運を盗む座敷童(「童の本懐」)
呪術師と“使い捨て”の幽霊(「煙のように光のように」)
ヒト型ケアAIと忘れられた女神(「NINI」)
お化け屋敷で働くがらくた(お化け屋敷へ、ようこそ)
少女と巨人の切ない国生み物語(「巨人の樹」
などなど全11篇!
装画はカワグチタクヤさん、1装幀は鳴田小夜子さん
定価 2,970 円(税込)/刊行日 2025年06月23日/ISBN 978-4-86528-473-7
作品ページ https://sayusha.com/books/-/isbn9784865284737
さっきまでちがう作品のゲラをしていたので、まだ記憶が戻り切ってないんですけど、刊行のときにまた書ければ。
まだ刊行日までひとつきほどありますが、お気に入りの本屋さんで予約していただけるととてもうれしいです。
みんなもお化け屋敷へ、そしてオガワ・ワールドへ、ようこそ!!
どうぞよろしくお願いいたします。