大学の講義で読まされる小説
what they are reading...
おはようございます。もう2月ですね。時間が経つのがはやい!!
1月の仕事
1月はリーディングを2件、絵本シリーズの訳稿、ゲラ2本、映画の字幕と新しい小説の訳に取り組みました。
映画のタイトルは『ロストサマー』。若手俳優が集まり活躍の場を広げようと立ち上げた映像制作会社889FILMの初めての長編映画です。映画字幕の仕事は日英翻訳です。この場合、下訳を仕上げたあとパートナーのマイケルと共同作業をします。何度も一緒に映像と自分のつけた字幕を見比べながら、もっと自然でなおかつ読みやすい表現はないかさぐります。難しいけど、楽しい作業です。映画の仕上がりがたのしみ!
2月の仕事
わたしの今月の主なお仕事は、長編小説の8割、短編、『聖なる証』のゲラ、そして日本語フラッシュフィクション専門週刊誌「CALL magazine」に寄稿するフラッシュフィクションを仕上げることです。
「CALL magazine」は作家で編集者の紅坂紫さんが企画、創刊、運営されている
毎週月曜日にコンビニエンスストアで印刷できるネットプリントを用いてフラッシュフィクションを配信し、配信期間終了後はInstagramにて全文を公開する「紙×Instagram」の新しいウェブジン
です。わたしはもともとフラッシュフィクションが大好きで、英語で書いて文芸誌に応募していたこともあったので、今回紅坂さんからお声がけいただき、すごくうれしかった。さまざまなプラットフォーム、フォーマットで創作発表をしていく、その道を模索するというのもとてもすてきだと思います。
その他に、たくさんミーティングも入っているので、時差ですっぽかさないようにしっかりがんばります。
大学で読まれている小説
先日、近くの大学の教科書販売に潜入しました。講義でどんな本が課題図書になっているか知りたかったのです。ジェーン・オースティン(『エマ』『プレイドと偏見』)、ジョージ・エリオット(『アダム・ビード』)、マーガレット・アトウッド(『オリクスとクレイク』)などの定番と並んで、「この本が課題図書なら、ぜひ講義を受けたい!」と思った作品があったので紹介します。
中国系カナダ人でカンフーの達人のトランス女性が、家庭での虐待から逃れセックスワークに従事する。シス男性によるトランス女性を狙う犯罪が多発。構造的暴力に加担する警察や人々から身を守るために結成されたトランス女性による自警団「口紅裂傷団」に入団し、戦いを挑むが………。マジックリアリズムのような語りと「ファミリー」を求める主人公の語りが素晴らしい。エマ・ワトソンのブッククラブ推薦図書。賞候補として多数ノミネート。(既読)
劇脚本。原爆投下10年後にカナダノバスコシア州で実際にあった「パグウォッシュ会議」が舞台。
ウィキペディアによると
「1957年7月7日、カナダ・ノバスコシア州パグウォッシュにある鉄道王サイラス・スティーブン・イートンの別荘に、湯川秀樹、朝永振一郎、小川岩雄、マックス・ボルン、フレデリック・ジョリオ=キュリーら10カ国22人の科学者たちが集まって第1回の会議が開かれた。会議においてはすべての核兵器は絶対悪であるとされた」
この劇では田舎町の子ども2人が会議に興味を示し、参加者からも温かく迎えられるけれどスパイが情報をさぐっていて…… という筋書きらしい。(未読)
カナダオンタリオ州北部にある先住民アニシナアベのコミュニティ。冬のはじめ、コミュニティ全体が停電する。数日たっても復旧せず、次第にコミュニティの外でも電気がなく、食料の運搬が停止していることが判明する。アニシナアベの習慣を大事にし、大地とともに生きてきた人たちは冬への備えが万端だったので、そこまでのパニックにはならなかった。しかし、南の都市では飢えと略奪で大混乱が起こり、やがて白人たちがやってきて……。ページをくる手が止まらないスリラー。
刊行当時から評判はよかったが、コロナ禍で小説の真実味が増し、ロングセラーに。カナダの公共放送局CBC(日本のNHKみたいな感じ)が企画するビブリオバトルの2023年選出作品(ほかにエミリー・セントジョンマンデルの『ステーション・イレブン』など)。(既読)
他にもクリー語の教科書がたくさんあったし、先週紹介したターニャ・タガクさんの『Split Tooth』もあった。驚いたのはアレクシーの『Indian Killer』もあったこと。先住民の物語や言語の資料があそこまでそろっているのははじめて見たかも。
本屋さんに行きたい!
わたしの家の近くには森しかないので、まだここに来て書店に行けていません。昨日の大学の購買部がいちばん書店に近い環境……。本屋さんに行きたくてたまりません!!! 今月は誕生日があるので、ぜったいに本屋さんに行って好きな本をたくさん買いたいと思います。
「2月は逃げる」と言いますが、なるべく見失わないようにがんばります。
今週も読んでいただき、ありがとうございました。
それではまた来週!