KAGUYA FUTURE
旧正月(春節)のため学校や仕事が休みの期間です。佐賀に帰ってきています。香港に来てからすぐに香港国際文学祭(節)でボランティアをはじめたのですが、そのご縁で今度のフェスティバルでは仕事の依頼がありました。まだ詳しくはお伝えできませんが、準備をしっかりして臨みたいと思います。
実家に『Kaguya Planet No.4 プラネタリウム』が届きました。前回の投稿でお知らせしたとおり、わたしのインタビューを掲載していただいています。また、今年からはじめったプロジェクト「よりよい未来をまなざして活動している人やその人の取り組みを広く世の中に紹介する〈Kaguya Future〉」の 〈Kaguya Future 2025〉に選んでいただき、選出コメントの掲載もあります。

ぜひ手に取っていただけるとうれしいです。
日本翻訳大賞
また、佐賀に来てから気づいたのですが「日本翻訳大賞」の季節ですね!!!読者推薦で『喉に棲むあるひとりの幽霊』の推薦文を柿原妙子さんが書いてくださっていて、すごくうれしかったです!!
この賞は2014年に始まり、読者推薦で最終選考に残る翻訳書のリストが決まり、最終選考は審査員によって行われます。英語の翻訳作品に限らず多様な言語の作品から受賞作品/訳者を選びます。なので、普段は目にする機会の少なかった様々な言語の翻訳文学のことを知ることができ、読書ガイドとしても秀逸です。
訳者としては、自分の翻訳した作品が「ちゃんと届けられた」と実感する、ほっとする機会ですし、普段は伝える機会のない他の翻訳者へのリスペクトを伝えられる、ありがたいプロジェクトだなと思っています。読者推薦で『星のせいにして』が最終選考候補になったときは夢みたいな気持ちでした。
今月末までどなたでも推薦することができますので、昨年出版された翻訳作品で推薦したいものがあれば、ぜひ書いてみてください!また、クラウドファンディングも開催されていますので、チェックしてみてください。
ふるさとで考えていること
佐賀に帰ってきてからも、毎日ピラティスと中文の勉強をしています。ピラティスはただ単に気持ちがいいからやっているのだけれど、中文は子供の勉強の付き添いで毎日授業を受けています。わたしが自分で勉強を続けている「廣東話」は口面語(話し言葉)なので、書面語の中文とは語彙や文法がかなり違います。書き言葉と話し言葉のふたつの別々の言語を学んでいるような気持ちになります。
教えてくれているのは、下の子の友達のお母さんで、毎週一緒に市場に行く仲のいい友達です。実は、ピラティスを教えてくれている先生も、子供の友達の母親です。先日は一緒にキンパップを作り、香港に帰ったらキムチも作り方も習う予定。毎月2回、辛い麺を食べに行く会もあり、メンバーは日本人のわたし、香港人、韓国人、台湾人ママたちで、みんな互いの言語を少しずつ話せるので、日本語、広東語、北京語、韓国語が飛び交います。幼稚園を卒園したらまた人間関係が変わるのだろうけれど、近所で毎日のように顔を合わせ、悩みを相談し、解決策を考え合える人たちに出会えたことは大切な宝物です。
佐賀に帰ってきて、少し静かに時間を過ごす中で、彼女たちの存在の大きさを改めて考えています。
アメリカの状況やガザの状況、その他様々なことを読み、血が沸騰するくらいの怒りまくっている毎日ですが、しっかりと立ち、押し返す。絶対に希望を失わない。投げやりにならない。できることをやっていく。呪文のように唱えながら、情報を集めています。スピードについていけない、情報が多く、情報によって引き起こされる感情の波に押し流されそうだけれど、マイケルといろいろ話しながら、書きながら、今、ここにいます。
あなたの場所の周りに〇を描いて。
そこが揺るがなく、安全でありますように。
守るための言葉が、しっかり握ることのできる何かが、そこにありますように。
これからも長く、きちんと大切に本を翻訳していくために本と離れようと決めて数カ月、本が今までになく自分に近い存在になっている気がします。やっぱりずっと自分を守ってくれていたのは、本だったのだと感じます。いろいろな形で物語は伝えられるのだけれど、わたしの場合はこの紙の、この形の「本」が、大事な大事な居場所で、わたしを守る「〇」だったみたいです。
そういう感じで、今わたしは、ふるさとでの時間を過ごしています。
ガザの地から届く「ふるさと」に帰ることができない人たちの声を聞きながら。