「停戦」
新しい年がはじまって半月ほど。ガザの「停戦」の知らせを現地の人たちがシェアしてくれる投稿などで追うここ数日です。朝起きて、ガザについて情報を得ることが習慣化している人も多いのではと思いますが、わたしもジェノサイドが詳細に報道され身を隠す人たちの言葉をよみながら、人間が人間に対して行い得ると思っていた残忍さをはるかにしのぐ現実を突きつけら続ける毎日で、気持ちの整理がつかないまま仕事をしたり、ご飯をつくったりしています。「停戦」といっても、イスラエルがその一存でそれを破ってもなんのペナルティもなく、ガザの人たち(だけでなくレバノンなどの近隣の地域の人たちも)は命の危険、身の安全の確保できない状況が変わらないことに激しい怒りを覚えます。先ほど、「ハマスが合意を守っていない」ためにイスラエルは「停戦」に同意しないかもしれないといった記事を読みました。「停戦」の知らせを喜び、祝っていた人たちが、なおも続くイスラエルからの爆撃やドローンの攻撃で殺されている。そんな中でも、絶えることなく言葉を伝え続てくれるジャーナリストのみなさんの姿に、絶対に知ろうとすることをやめない、できることを考え行動することをやめないでおこうと(勝手に)約束しているような気持ちになります。
パトリック・ウルフは「Settler colonialism is a structure, not an event」と言っています。つまり、セトラーコロニアリズムは虐殺や戦争、家屋の破壊や土地の奪取といったひとつひとつの「イベント」ではなく、その土地に住む人たちを「消去」し移民者が定住する「前提条件」となる状況をつくりそれを保持する「構造」だと述べています。セトラーコロニアリズムの論については、先住民からの視点や考察が抜け落ちていて、それこそ植民地主義的まなざしかた抜け出せていないのではないかという批判もありますが、セトラーコロニアリズムが構造、そして状況であるという論点はずっと自分の胸に残っていることです。そのうえで、「停戦」「停戦後」といったイベントを注視するとともにその構造をどうやって変えていけるのか考えたい。
お知らせ
1月19日刊行予定の『Kaguya Planet No.4 プラネタリウム』にインタビューが掲載されます。先月文学フリマで東京に行ったときに、編集者の堀川夢さんにインタビューしていただきました。堀川さんのつくってくださった場所のおかげで、とても安心して話すことができました。時間やスペースの関係で、話しきれない部分もありましたが、自分がどのように翻訳をしているのか、ZINEのこと、翻訳者として自分の立ち位置を批判的に明らかにすることなどについて話しています。手に取っていただけると、とてもうれしいです。
近況報告
わたしは大きな作品のゲラ作業を終え、ここ一週間ほどゆっくりしています。今年のわたしの目標をちょっと書こうかな。
〇体を整えること:週3,4日早朝に走っているのは継続して、プラス、ここ数カ月間ピラティスをしています。週1に1時間ずつ習っていますが、とても体の調子がよいいです。自分の体を知って、整えていくことを目標にゆっくりやっていきたい。
〇広東語を引き続き頑張る:週1回2時間、教室で学んでいます。プライベートレッスンに切り替えてから、もうすぐ1年かな。先生との相性がすごくよくて、こんなにストレスなく学び続けられることがありがたいなと思います。広東語を学んでいることで広東語話者のママ友も増え、マーケットの常連にもなれ、木版画教室にも参加できました。やっと基礎ができてきたかなと思うので、今年はもっと使える、聞き取れる表現を増やしていきたい。
〇翻訳は地道に:商業翻訳はペースダウンする一年に。毎日物語世界に浸れない生活は正直すっごく寂しいですがこのまま突っ切っても息切れしちゃうので、マギーパイの活動だけにしよう、くらいの気持ちでいきたい。マギーパイの第二号は『Dis-oriented Penguin』でペンギンがテーマだよ。ヴェルナー・ヘルツォーク監督のペンギンについてのドキュメンタリーから始まるZINEです。(もちろん面白い作品は翻訳したいので、吉田っぽい作品でもし依頼があればご相談ください!)
〇「大人のための英語塾」みたいなものを始めたい:英語塾なのか日本語塾なのか分かりませんし、「大人のため」にするか「新しいスタートを切りたい人のための」にするか悩んでいるのだけれど、香港に来ていろんな「教室」で学びを続けるうえで、とくに移民やドメスティックワーカーなど孤立しがちな人たちに向けての教室を開きたいなという気持ちが芽生えてきました。トロントにいたときから、移民高齢者や移民小学生に英語を教えていたり、トロントに行く前は塾講師だったりしたし、トロント大学院でも日本語コースのTAで。そんな話をしていたらマイケルに、「いくみはだって、大学院も学部も教育学部卒業だよね」と言われ、あれ、そうだったけかと思い出した。
また、トロントでも東京でも香港でもどうしてか「いくみに会って、これを始めようって思えたんだ」と言ってくれる人が多く、それもそういう場を作ってみたいかもしれないと思えた理由。
〇船に乗って釣りにいきたい:去年の5月、広東語の先生に釣竿をもらってから釣りを始めたのだけれど、ずっと船着き場の近くでの釣りで、船に乗ったのは佐賀のワカサギ釣りくらい。香港の海に船で出て、大きい魚を釣ってみたい。
〇子供たちのサポート:先日9歳児の学校に先生との面談へ行くと、「この子は、学校に来ていちばん日が浅いのにだれよりも広東語で話そうとしてくれます。新しいことに臆せずに挑戦する姿に教師一同、すごく感動しています。彼のことは『ジェントルマン』ってわたしたち、呼んでしまうんですよ。すごく優しくて、頑張り屋さんです」と言ってもらい、ほんとにうれしかった。いつの間にそんな成長したんだろう。
大人の都合で子供たちの環境が変わることで、心配する部分も少なくないので、子供たちが楽しそうに日々生活しているのを見て、高い順応性を持った子供たちだなあと思います。マイケルと、ママ友やかかわってくれる地域の人たちと協力しながら、見守っていきたい。ちゃんとここで見てるからね。