おはようございます。風邪をひいてしまいました。日本は年度末ですね。すごく忙しい日々を送っている方もいると思います。体調にはくれぐれも気を付けてください!!
今、家の庭がキレンジャクのパーティー会場になっています。キレンジャクは英語では「ボヘミアン・ワックスウィングズ」と呼ばれています。赤い木の実をついばみ、酔っぱらってるみたいにみえるからかな。ボヘミアンな感じだからかなとか、勝手に想像しています。
さて、人生にはいろいろな「はじめて」がありますが、先日わたしははじめて、子供にカノジョを紹介されました。ここ2カ月くらい「ガールフレンドができた」という話は聞いていたのですが、やっと会えた! 学校のスプリングコンサートでまず会って、そのあとはうちに遊びにきてもらいました。スターウォーズのアナキンとパドメごっこしてるんだけど、それってすごい悲恋だし、アナキンはダースベイダーになっちゃうし、いいの!???ってつっこみたかったけど、7歳ですので、想像の世界を自由に冒険してほしいと思い、ぐっとこらえました。笑
そしてその子から、「いくみさん、Greenland sharkというサメは100年生きてもまだ若いほうなんですよ。知ってましたか?」と教えてもらったのがもっとびっくりした。めちゃめちゃ生きるサメがいるのです。物知りな7歳もいるのです。
「邦訳刊行してほしいグラフィックノベルBEST3」
はじめて、と言えば、いつかグラフィックノベルの翻訳をしてみたいなあと思っています。カナダに来てからグラフィックノベルにはまっているのです。
ここで突然ですが、「邦訳刊行してほしいグラフィックノベルBEST3」を発表します!
第3位「SHEETS」シリーズ
こちらはマージョリー・グラットという13才の女の子が主人公。母を亡くし、喪失に沈むなか、なんとか母が大事にしていた家業のランドリー屋さんを切り盛りしようとします。だけど、怪しい実業家(大家)がビジネスを潰そうとするのです。マージョリーは学校でもあまり居場所がなくて、自分が「ゆうれい」みたいだなあと思って生きているのですが、ある日、ほんとうの幽霊に会います。その幽霊、シーツなんです。ランドリー屋さんにあるシーツが、夜になると幽霊になって動き出す。朝日がさすと、シーツに戻っちゃう。マージョリーと出会うゆうれいは、溺死した子供のゆうれいで、マージョリーの母親の幽霊ではありません。ゆうれいのように生きる少女と、ゆうれいだけど思いきり「生きている」シーツが送る静かな再生の物語です。
今年の秋に第3巻が刊行予定ですが、2巻「DELICATES」もすごくよくて、心霊写真を撮りたい女の子とマージョリーとゆうれいの3人がメンタルヘルスやいじめの問題に、静かに向かっていくお話です。
第2位『DUCKS』
Ducks: Two Years in the Oil Sands by Kate Beaton
「孤独と労働、生き抜くことについての美しい作品だ。階級やジェンダーが複雑に絡み合う地形をケイト・ビートンの深い思索とともに進む。喪失と尊厳にページが震える」ーーカルメン・マチャド
最後の1コマの破壊力がすごい。読み終わった後もしばらく、嗚咽が止まりませんでした。
学資ローンを返すためにカナダカルガリー州フォートマクマリーのオイルサンド採掘場に「出稼ぎ」にいく著者ケイトが主人公の自伝です。彼女の2年間を淡々と描きます。
男性労働者が圧倒数の現場で働くなかで、女性差別をうけるケイト。常習化しているハラスメントに失望の日々を送ります。徐々にタールサンド産業自体の搾取構造に気づき、環境破壊を推し進めるマシーンのの一部に自分も組み込まれているのだと認識しますが、抜け出せません。
利益を追求するあまり人間がないがしろにされる職場で、追い詰められていく人々。すごいディストピアで、これが本当に現代カナダで起こっているのだと衝撃を受けました。
タールサンドはファーストネーションの土地で採掘が行われています。そちらの視点からしか捉えていなかったけれど、実際になかで働いた人の、しかも女性の証言としてもこの作品はすごく意義があるのではないかと思います。決して派手ではない表現どちらかというと日記のように進んでいくのですが、じわじわボディブローがきいてきます。
第1位
堂々の第1位は『Birds of Maine』です!!!
Birds of Maine by Michael DeForge
環境破壊で地球が住めなくなったから月で暮らそうふんふふーん♪という作品はよく聞きますよね。でもこちらのグラフィックノベル、月で暮らしてるのは人類ではなく鳥類です。アメリカのメーン州から来た鳥たちです!
月面の鳥たちが住むコロニーでの情報伝達は、菌類ネットワークによって行われています。図書館には鳥の歌が保管されており、図書館は学校や集団セックスの場所として使用されています。鳥たちはユニバーサルインカムならぬユニバーサルミミズで食べ物に困らずに暮らしています。バンドとかも結成して楽しそうです。「古代地球メーン州歴史学」なるものがあり、歴史的に食うもの住む場所に金を払っていたという人類を嘲笑し、人類ってなんだろなあと絶対やべえやつらだから距離取って正解だったな、とか考えている鳥コミックですごいおもしろいです。
しかも絵がかわいいし、本自体がポップで最高。ね、読んでみたくなってきたでしょ!?
春は来ないけれど
昨日は雪が降り、今朝も起きたら粉雪が地面を覆っていました。春はなかなか来ないようなので、すっとばして夏になるのかなあと切ない気持ちで窓の外をながめています。
ドナヒュー著『聖なる証』の書店員さまのゲラ読み、感想が少しずつ届いていて、ほんとうにほっとしています。今回はめっちゃめちゃ難しかった。(『星のせいにして』とは全然ちがうトーンなのですごく悩みました)。楽しんでいただいているようでうれしいです! ありがとうございます!
そして書影が出ました! どどーん!! フローレンス・ピュー!!!
また、クィアSFアンソロジー『結晶するプリズム』もたくさんのご支援、コメントなどありがとうございます。こちら、31日で締め切りとなっています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
それではまた来週です! Have a good day!