女性のためのブックガイド『MIMOSA』
International Women's Day
配信がちょっと遅くなってしまった! なんだか時間が進むのがはやすぎませんか!??
今日はおすすめの本の話と、わくわくする企画の話をしたいと思います(ちょっと長いです!)。
1.女性のためのブックガイド『MIMOSA』について
2.『結晶するプリズム 翻訳クィアSFアンソロジー』について
3.超短編「ペニーロイヤルティー」のインスタグラム公開について
女性のためのブックガイド『MIMOSA』
国際女性デーにむけておすすめの本を紹介してほしいとご依頼をいただいたので、いろいろと考えていました。
企画・編集は紅坂紫さん。ツイッターで告知されました。
【告知】 3月8日の国際女性デーに合わせて、同日より「女性のためのブックガイド『MIMOSA』」をネットプリントで配信致します。同時にDropboxにてデータも無料配信する予定です。宜しくお願い致します!
女性をエンパワーできる作品ということだったので、なるべく暗くならない作品を選びましたが、オクタヴィア・バトラーの『キンドレッド』とかも入れたかったですね。わたしが紹介するのは2作品ですが、もっと紹介できるならぜひ紹介したかった作品をここに書きますね。紹介する2作品は、MIMOSAで確認していただけるとうれしいです!
『星のせいにして』
エマ・ドナヒュー 著 吉田育未 訳(河出書房新社)
自分の訳書ですが、ぜひ今、日本に住む女性に読んでほしい作品です。1918年のアイルランドダブリン。スペイン風邪が猛威をふるい、第一次世界大戦で社会が疲弊するなか、奮闘する助産看護師ジュリア・パワーが主人公。サフラジェットで医師、政治家として活躍した実在の人物キャスリーン・リンと、赤毛の謎めいた雑用ボランティアのブライディ・スウィーニーがジュリアを助けます。産科病室に運び込まれてくるひとりひとりの妊婦には、いろいろな事情があり、ジュリアは出会いの中で成長していきます。悪政と家父長的社会がいかに女性の身体を搾取し、痛めつけるか。日本の今の状況と重なる部分もあり、より多くの人に届けたい作品です。
『これからのヴァギナのはなしをしよう』
リン・エンライト 著 小澤身和子 訳(河出)
この本を読んだ時、自分の体なのになんでわたしはこんなにも知らないのだろうと愕然としました。ヴァギナについて学校で習ったこともなければ、親に教えてもらったこともありませんでした。すごくためらいながら、ほんとうに勇気を出して先輩に相談したとき以外、他人とヴァギナの話をしたことはないかもしれない。「ヴァギナ」という言葉自体、そんなに口に出したことなかったかも。それがなぜなのか、そしてそれによってわたしたちは何を我慢しているのか、見えなくさせられているのか、考えさせられます。子供たちを育てているときに読めてよかったです。
「沈黙の〈自伝的民族誌〉:サイレント・アイヌの痛みと救済の物語」
石原真衣 著(北海道大学出版会)
オートバイオグラフィーという手法はすごく面白いと思います。とくに、今まで語られなかった言葉を出すためには、もっとも有効な手段ではないでしょうか。大学院で「クリティカル・オートエスノグラフィ」というメソドロジーを学びました。パレスチナ出身の友人は自分のガザ地区での生い立ちを書くことで、社会の問題点をあぶりだそうとした。石原真衣さんの「アイヌ」と「和人」のはざまで揺れ動き、そして「女性」であることでまた「沈黙させられる」経験を書き記すこと、それにより「沈黙」への問いを構造化するという試みが刺さりました。「なぜ『私』は社会空間において透明人間で、なぜ人びとは『私』の語りを了承しないのか(p41)」という問いかけに少しでも心が動く人に読んでほしい一冊です。
『フェミニスト・キルジョイ』
サラ・アーメッド 著 飯田麻由 訳(人文書院)
キルジョイとはそのまんま、キル(殺す)ジョイ(喜び)なので、「場を白けさせる」とか「水を差す」とかいう意味があります。フェミニストでいると、当たり前にみんながやっていることや楽しんでいることに対し、「わたしは楽しめない」「お前らなんなんや」と表明する(せざるをえなくなる)ことが多々あり、ひんしゅくも買うしまじで疲労します。だけど、そんなあなたにその方向性でいいんだよ、キルジョイやっていきましょう、というメッセージが込められた本です。わたしが好きだったのは、キルジョイのための文学作品が紹介されているところ。なかでも『ルビーフルーツジャングル』に出会わせてくれたのは大きかったです。
※『ルビーフルーツジャングル』はリタ・メイ・ブラウンの自伝的ピカレスク小説。養子として育てられたモリ―は、幼いころからジェンダー規範にとらわれず、自分らしく生きていきたいと思っている。家父長的社会のプレッシャー、レズビアンであることへの差別、親がいないことへの偏見に負けず、我が道をいくモリ―。家族も家も失い、ひとりニューヨークの街をさまようが、映画監督になるという夢をけっしてあきらめない。ひとりのレズビアン女性が「クィア」が蔑称だった一九七〇年代のアメリカをどう生きたのか。彼女の戦いが今の私たちに伝えるものとは……?
(この作品絶版です。新訳で出したい方いらっしゃったらレジュメは用意しているのでお声がけください!)
※今回の依頼は邦訳のある作品だったので、今度邦訳のない作品でリストを作ってみようかなと思います。
2.『結晶するプリズム 翻訳クィアSFアンソロジー』について
『トランスジェンダー問題』を読んで、トランス女性の経済的困窮が深刻な問題であることを知り、なにかできないか考えていたところ、お声がけいただいた企画です。世界中のさまざまなクィアなストーリーを紹介し、プライド月間には無料で公開するというもの。わたしは英語圏の作品選びと翻訳を担当しています。
無料で公開するため、クラウドファンディングで資金を集めます。
インスタグラムのページに詳細がありますので、もしよければ、のぞいてみてください! どうぞよろしくお願いいたします。
3.超短編「ペニーロイヤルティー」のインスタグラム公開について
先週紹介したフェミニズム・だじゃれ超短編「ペニーロイヤルティー」ですが、インスタグラムで読めるようになりました! コンビニで印刷したよーというご連絡もいただきすごくうれしかったです。子供を産んでからずっと創作意欲がなくなっていたから、こんな風に少しずつ書く機会をいただけるのは大きな励みになります。
今は『聖なる証』の再校ゲラが終わり、自分史上いちばん長い作品(訳するのが)に挑戦しています。それからピコー作品のMad Honeyも読んでいるのですが、めちゃめちゃ辛くて緊張感がやばくてハートがばくばくしています。レジュメを書いたらまた協力してくれそうな人をさがすぞ!
物語の力でトランス差別に抗いたい。ひとまず風呂とトイレの話しかできない人は、ちゃんと本を読んでください。
トランスジェンダー映画祭も開催されます!


わたしも二回連続でチケット購入しました。今回は『最も危険な年』を観ようと思います。みなさんもぜひ!
今週も読んでいただいてありがとうございました。Have a good week!